プライドを捨てた名店『烏森百薬』~運営者のブログNo.12~

 

東京・新橋にある『鳥森百薬』というお店をご存じだろうか。2500円(8品)、3000円(9品)、3500円(10品)の3コースのみ。+1500円で2時間飲み放題を付けられる。最大でも5000円で済む価格設定だ。

 

なんとこのお店、オリジナルメニューが5つしかない。それ以外はお取り寄せでまかなっている。常識ではあり得ない戦略。それでいてめちゃくちゃ美味しいらしく、人気急上昇中だそうだ。

 

察しの良い人は気付いただろう。このお店、利益率がめちゃくちゃ高い。料理人を初めとする人件コストが他店とは比べものにならないほど低いから、新橋というエリアでも、この価格帯で成り立っているのだ。

 

背景にあるのは、冷凍食品の質の向上。「お取り寄せ」と聞くとどこかレベルが落ちるように感じてしまうが、いまは全くそんなことはない。一流レストランに引けを取らないほどの美味しい食材がゴロゴロある。

 

信じられない人は一度、スーパーやコンビニで買って食べてみてほしい。そこらの大衆居酒屋より数段美味しい食材に簡単に出会うことができる。

 

『烏森百薬』はそこに目を付け、ハイクオリティながら低価格を実現している。一から食材を仕入れて、調理し、提供するまでの多大なコストを考えるれば、利点は明らかだ。

 

なぜ同様のお店が少ないのか。「料理人の美しいプライド」が一因だと考える。経験をもとに試行錯誤してメニュー開発し、美味しく創り上げて提供する。これが飲食店経営の定型だ。

 

だから、『鳥森百薬』のような経営方針を快諾する料理人は少ないと思う。自分の腕で一から作りたいし、そうでなければやりがいを感じられないと思う。現に、私がこれまで経験してきた名店のほとんどがそうだ。

 

一方、経営という視点で見れば美しいプライドを捨てた方が成功確率が上がる。『鳥森百薬』がそれを証明していると感じる。

 

飲食店経営に興味を持つ人が参考にすべき事例だと思う。

 

ことわっておくが、料理人のプライドを否定していると捉えられるては困る。心の底から尊敬しているし、実際に取材をしたこともある。本記事はあくまで「経営のヒント」を記したに過ぎない。

 

 

関連ランキング:居酒屋 | 新橋駅内幸町駅汐留駅

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です